小学生といっしょ

国語辞典を引く私がふと思いました。小学生向け国語辞典に持ち替えたらどうなるのだろう。

大人より小学生: 「意味」と「意義」を比べる

看護学生も趣味ですから

今日、授業中に日本語が第一言語である教員から聞いてしまいました。

「食事の意味」と「食事の意義」、「意味」と「意義」の違いはわかりますよね。

わかりません。全くわかりません。この用例においては同義と解釈するのが適当でしょう。

己の日本語を全く疑わず自信たっぷりな様を見ながら、私は考えたのです。小学生だって首を捻るだろうと。

ちなみに模範解答では前者を「ものを食べること」としていました。だったら後者も同じ「意味」で捉えたらと思っていました。

「意味」と「意義」を比べる

「意味」と「意義」はとても近くにある言葉で、それぞれお互いの語釈を持っています。件の例では「意味」も「意義」も「理由」あるいは「価値や重要性」という語釈の採用が適当でしょう。と判断できる材料が小学生向け国語辞典にもあるのか、調べてみます。

いみ【意味】

  1. [名詞][動詞] ことばや文が表しているもの。 (例) 意味を調べる/「止まれ」を意味するマーク。
  2. [名詞] ものごとの裏にある訳。 (例) 兄のおこっている意味がわからない。
  3. [名詞] 値打ち。 (例) この研究は、とても意味のあるものです。 [類] 意義

いぎ【意義】

[名詞]

  1. 値打ち。 (例) 意義のある一年だった。 [類] 意味
  2. ことばの表す内容。ことばの意味。

(チャレンジ小学国語辞典 第五版)

判断材料はしっかり載っております。

驚いたのは「意義」の語釈の2番目。私がこの語釈で「意義」という言葉を使うことは稀故、小学生向け国語辞典には載っていまいと推測していました。念のために三省堂の方も調べてみましょう。

いぎ【意義】

[名]

  1. ことばや文などが表しているもの。わけ。 (例) ことばの意義。
  2. 値打ち。[例] 意義のある仕事。 [類] (①・②)意味

三省堂 例解小学国語辞典 第五版)

あーあ、これは深みにはまりましたね。続きは後日。明日か、明後日か、週末か。

例解小学国語辞典の語釈選択の方が好みですが、国語辞典の存在「意義」を考えるとチャレンジ小学国語辞典の方が優れているかも知れません。

今回使った国語辞典

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

幼い小学生は賢い: 「砕く」を調べる

お引っ越し

blogじゃなくて、中の人が。この4月から弘前看護学生をやっています。弘前、つまり津軽。日本語を扱うものとしてもおもしろい土地であることに気付いたのは、弘前行きが決まっただいぶ後でした。

津軽弁という日本語

弘前市青森県にあり、青森県は日本国にあります。公用語はもちろん日本語で、日常使われる言葉も日本語です。しかしその日本語が私の使う日本語じゃない何か、津軽弁です。

津軽弁はちょっとした会話でも津軽弁特有の単語が使われます。まず聴くことになるのは「わ」や「わい」*1。「私」という意味です。それなりの年齢の女の子ともなれば可愛くないと思うこともあるようで、一人称を自分の名前とする人が結構多いようです。見た目が幼い子が多い地方なので、一部の需要に直撃ですね。

一方、標準語でもおなじみの単語で、意味も標準語から見てわからなくはないんだけど微妙に使われ方が違う単語も存在します。

「砕く」を調べる

両替すること、主に紙幣を硬貨に替えることを標準語では「崩す」「細かくする」などと言います。これが津軽弁では「砕く」と言うようなのです。最初に聞いたときは話者の癖かなと思ったのですが、別の人からも聞こえてきて方言だと気付きました。

ではその「砕く」を小学生向け国語辞典で調べてみましょう。小学生向けどころか一般向けにも件の語釈はないとわかっていて調べるんですけどね。(日国にはあるんじゃないかと思いますが、今、手元になくて...)

くだく【砕く】

[動詞]

  1. 固まっているものを、こわして細かくする。 (例) 岩を砕く。
  2. いろいろ考え、心配する。 (例) 楽しい旅行になるよう、心を砕く。
  3. 難しいことを、わかりやすくする。 (例) 意味を砕いて説明する。

(チャレンジ小学国語辞典 第五版)

2番目の例がいまいちなのはさておき、やはりありません。

1番目の語釈の延長なのですが、「崩す」にはそれそのものがあります。よって載っていないと言ってよいでしょう。

くずす【崩す】

[動詞]

  1. 形のあるものをこわす。 (例) 山を崩して平地をつくる。
  2. 整っていたものを乱す。 (例) 列をくずす/体調をくずす。
  3. 細かいお金にかえる。 (例) 千円札を百円玉にくずしてもらう。

(チャレンジ小学国語辞典 第五版)

2, 3番目の例がなぜ「くずす」なのかはさておき、この通り、両替が直接的に示されています。

津軽の小学生はどうやって辞書を引いているのか

今日の要点はここ。「辞書引き学習」なるものが隆盛を極めているらしい今、津軽を初めとした強い方言を持っている地域の小学生たちはどうやって国語辞典を引いているのでしょうか。

考えてもわかりっこないので聞いてみたところ、小学生の時点で標準語と方言を区別しているそうです。そもそも教科書に載っているのは標準語だからとも。方言については話すうちに覚えたり、親から教わったりするけど、国語辞典で調べることにはならないみたいです。

津軽の小学生は一桁の年齢にして1.5種類(?)の言語を扱う多言語話者なのかも知れませんね。

まとめ

  1. 方言は小学生向け国語辞典には(一般向け国語辞典にも)載っていない
  2. 津軽の小学生は国語辞典を引く際に標準語か方言かを意識している

標準語による国語辞典や学校教育程度で方言が消えないことは、これからの教育を考える上で重要なヒントかも知れません。

ちなみに

津軽弁と一緒くたに扱われますが、弘前と青森(市)、五所川原ではそれぞれ異なるそうです。五所川原が一番きついとのことで、きつい地域の人が他を聞くと「訛ってない」と感じるとか。

今回使った国語辞典

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

*1:調べてみると「わい」は下北弁なのかも

進級しても小学生: 「改版」を調べる

お引っ越し

Roon.ioがGhostに買われ幽霊となったので引っ越してきました。更新できていなかったのはそれと関係ありませんけどね。状況は多少改善される見込みです、仕事辞めたから。

4月と言えば新1年生

小学生向け辞書と言えば入学祝いの贈り物として定番。実用的かつ大好きなので中学、高校、大学、専門学校でも是非この文化を残して欲しいなと思います。大学入学あたりで日国全巻がもらえたら嬉しいよね。二版絶対買えない、仕事辞めたから。誰か看護学大事典 第2版をプレゼントしてください。

新学期に伴う私の事情はさておき、辞書の事情はこのblogに影響します。だいぶ遠回りしましたが、要は、ベネッセが改版しています。

  • チャレンジ小学国語辞典 第五版 2011年1月発行、手元の版
  • チャレンジ小学国語辞典 第六版 2015年1月発行

どうやら百科事典要素を強めたみたいですが、現物を見てみたいよねぇ。今度買ってきます。金ないんですけどね、仕事辞めたから。

「改版」を調べる

さて、今回はこの記事で使った言葉「改版」を調べます。

SEをやっていると設計書類の最初で(最後じゃないんだよね)「改版履歴」と見かけることも多く、見慣れた言葉です。しかしよくよく思い返してみると、小中学生では使わなかったように思えます。これは小学生向け国語辞典に載っていないかなという推測をしながら調べてみましょう。

載っていませんね。ベネッセ、三省堂ともに見出し語「かいはん」がありません。

  • チャレンジ小学国語辞典 第五版
  • 三省堂 例解小学国語辞典 第五版

そもそも「版」はあるのか

「版を改める」の「版」って何? と疑問を持つ前に、国語辞典の表紙で見せつけられる「版」。これが載っていなかったらさすがにまずい。

はん【版】

〔片〕8画 [5年]

  1. 印刷するために字や絵をほりつけたもの。 (例) 版画/版木/木版
  2. 印刷する。 (例) 版権/版元/出版/初版/新版

(チャレンジ小学国語辞典 第五版)

はん【版】

[画数] 8画 [部首] 片(かたへん) (5年)

  1. 印刷するために、文字や絵をほったり、活字などを組んだりしたもの。 (熟語) 版画。活版。木版。
  2. 印刷して本を作ること。 (熟語) 版元。出版。絶版。 (例) 版を重ねる。

三省堂 例解小学国語辞典 第五版)

なるほど、5年生で習う漢字なんですね。

そりゃ載っていて当然だと語釈を読むと、むむ、それぞれ表紙にある「第五版」の説明ができませんね。語釈は「版」の基礎的内容の他、よく見られる用例である「印刷する」にまで踏み込んでいるだけに残念です。一般向けの国語辞典には載っているので、わざと省いているのでしょう。表紙を理解させないことが適当とは私には思えませんが。

はん【版】

〔=版木(ハンギ)。鉛版(エンバン)〕

[一](名)

  1. 印刷用のインクを塗(ヌ)れば すぐ印刷ができるように、活字や写真などを整えたもの。「活字を―に組む」「―を改める」
  2. 出版の回数。「―を かさねる」「第六―(ロッパン)」 ⇒:刷り③。

[二](造語)〔─版(バン)〕

  1. 出版(物)。「豪華(ゴウカ)―」「縮刷―」
  2. 製版。印刷版。「オフセット―」
  3. 〔新聞・雑誌で〕特定の地域や曜日を限定して編集するページ・出版物。「静岡―」「アジア―」「日曜―」
  4. 様式。ふう。「ハムレットの現代―」

三省堂国語辞典 第七版)

まとめ

今回使った国語辞典

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

三省堂国語辞典 第七版

三省堂国語辞典 第七版

小学生が感じる一日: 「暦日」を調べる

4, 5月がお休みだった理由

お休みながなかったから。

そんな悲しい事実も利用しちゃいましょう。今回はブラックと蔑まれる環境でも明るく生きている17歳のみなさん御用達の言葉です。

「暦日」を調べる

労務でよく聞く言葉、逆に言えばそれ以外で聞かない言葉。「暦日」を調べます。

予想は、ない。私自身、「暦日」なんて使うようになったのは社会人になってから、今の労働環境に置かれているからです。小学生が自分を表現するために使うとは考えがたい言葉です。また、圧倒的多くの保護者にとっても縁遠いのでは。多くの人が気にしていたら大変ですからねぇ。

ありません。2冊ともに、見出し語「れきじつ」はありません。

  • チャレンジ小学国語辞典 第五版
  • 三省堂 例解小学国語辞典 第五版

まとめ代わりの推測

小学生向け辞書に載るか否か、その基準を何となく探ってもいるこのblog。今回は1つ、推測ができました。

  • 小学生が自分を表現するために使う言葉が収録される(のかも)

今回使った国語辞典

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

小学生に弄されたい?: 「弄する」を調べる

百合を許さない方もお呼びしました

定評ある無駄遣い力を発揮してもう1冊『三省堂 例解小学国語辞典 第五版』を買ってしまいました。Amazonアウトレットで安かったんだもん。

売りは「抜群の軽さ」だそうですが、手元の『チャレンジ小学国語辞典 第五版』と持ち比べてみて正直わかりません。それでも軽さには相当こだわりがあるのでしょう。

Japanese dictionaries for elementary school kids size comparison

  • B6判: 例解小学国語辞典 (通常版) = チャレンジ小学国語辞典 コンパクト版
  • A5判: 例解小学国語辞典 ワイド版 = チャレンジ小学国語辞典 (通常版)

三省堂は小さい方を通常版として据えています。ランドセルを少しでも軽くしたいのでしょうが、そもそも辞書を持ち歩く必要はあるのでしょうか。旧版の古本を2冊買って、学校と家に置けば……などと言うと出版社のみなさんに怒られてしまいそうですが。2冊セットで安くすればいいのにね。

さて、前回は『チャレンジ小学国語辞典』に決めた理由を書きました。せっかくなので選ばない理由となった語釈を見てみましょう。

こい【恋】

[名] [動-する] 異性を特別に好きになる気持ち。恋愛。 [例] 恋をする。 ⇒ れん【恋】

れんあい 【恋愛】

[名] [動-する] 男女が、たがいに相手をこいしく思うこと。恋。

三省堂 例解小学国語辞典 第五版)

ね、今時男女に縛られています。「人を特別に好きになる気持ち」や「たがいに相手をこいしく思うこと」の方が文字数も節約できるのに。「それって友達とどう違うの?」って言われちゃうのかも知れませんが、いいんじゃないのかな。17歳の私にだってわからないよ!

単純に古い語釈を引き継いでいる可能性もありますが、この手の言葉は調べられがちと察しているはず。第六版では古典的な性別から解放されることを祈ります。

「弄する」を調べる

今日は先日どこかで見かけた表現、「弄(ろう)する」を調べます。

見かけたときに「何となくわかるものの、誰かに説明できるほどハッキリしないから」と国語辞典を引きました。私が辞書を引く理由の多くはこれです。意味は漢字表記の通り「もてあそぶ」。うーん、どうもしっくりこないので、本気であれこれ考えるついでにネタにしちゃいます。

「(ろう)」とふりがなを振るほどなので難しい言葉に違いありません。小学生向け国語辞典に持ち替えたらおもしろいかなとも思いました。なお、「弄(ろう)する」は何らかの用字用語集に従った表記なのでしょう。共同通信社『記者ハンドブック辞書 第12版』でもそのように指示されています。

では、引きましょう。

ろうする【弄する】

[名詞] 自分の思うままにあつかう。 (例) 策を弄する(= あれこれとはかりごとをめぐらす)。

(チャレンジ小学国語辞典 第五版)

ろう【弄】

[画数] 7画 [部首] 廾(にじゅうあし)

[音] ロウ [訓] もてあそ-ぶ

  1. 手でいじって遊ぶ。 [例] おもちゃを弄ぶ。
  2. 思うままにあつかう。

[熟語] 愚弄 〔= ばかにして、からかうこと〕。翻弄。

三省堂 例解小学国語辞典 第五版)

三省堂 例解小学国語辞典』では見出し語にありませんでしたので、漢字見出しを引用しました。やはり新聞等でふりがなを振るぐらいの言葉になってくると小学生向け国語辞典では厳しいようです。

このblogは国語辞典を比べようって企画ではありませんから、それぞれの違いには構いませんが。小学生向け国語辞典を窓に日本語を深く考えることは大切な目的の一つです。「弄する」の語釈を弄びましょう。いや、この使い方は違うでしょう。さ、遊びましょ。

「弄ぶ」で例文を作れと言われれば誰もがこの手の文章を返します。

ナタリアは金髪のしっぽを揺らしながら、 彼女の男の部分を弄んだ。

ナタリアは私の好みから言うと中学――余計なことを言うのはやめましょう。「弄ぶ」をその語釈で置き換えてみます。

ナタリアは金髪のしっぽを揺らしながら、彼女の男の部分を思うままに扱った。

「思うままにした」としたいところですが我慢。さあ「思うままに扱う」を語釈として持つ単語は、そうです。

ナタリアは金髪のしっぽを揺らしながら、彼女の男の部分を弄した。

この表現はいただけません。自信を持って申します、いただけません。しかし多くの国語辞典の語釈はこの表現を支持しています。「思うままに扱う」など挟むことなく、「弄した」の語釈に「弄ぶ」があります。小学生向けの国語辞典はおろか、ざっと調べた次の一般向け国語辞典が同様の語釈を載せています。

  1. 岩波国語辞典 第六版
  2. 広辞苑 第五版
  3. 広辞苑 第六版
  4. 三省堂国語辞典 第七版
  5. 大辞林 スーパー大辞林3.0
  6. 集英社国語辞典 第3版
  7. 現代国語例解辞典 第四版
  8. 大辞泉 第二版
  9. 国語大辞典 新装版
  10. 明鏡国語辞典 初版
  11. 明鏡国語辞典 第二版

明鏡国語辞典』なら勝てると思ったのですが、残念ながら敗退。

私の感覚から言えば「弄する」対象は物理的なものではありません。絶対的な優位にある「弄ぶ」に比べ、「弄する」には試行錯誤している感がありそうです。そして「弄する」と「弄ぶ」には置き換えに耐えられるほどの互換性はない。この感覚は国語辞典の支持を得られるのでしょうか。

明鏡国語辞典』の後ろに控えるのは『小学館日本語新辞典』でしょう。

ろう-する【弄する】

[他サ変] ロ ース ル | 〔コトヲ〕手に持って遊ぶ。転じて、自由勝手に操る。もてあそぶ。 (例) 策を弄する/いたずらに技巧を弄する。

小学館日本語新辞典 初版)

「弄する」対象について感覚と合致しました。しかし互換性の点において「弄する⊂弄ぶ」となっている点が不完全と言えます。なお、同様に対象について区別している国語辞典はいくつかあります。

  1. 小学館日本語新辞典 初版
  2. 新選国語辞典 第九版
  3. 新明解国語辞典 第五版(語釈そのものはだいぶ異なるが、「弄する」を「弄ぶ」で置き換えられる説明は他と同様)
  4. 新明解国語辞典 第七版(第五版と同等)

ここまで来ても己の感覚を疑わない強気さで突き進むと、何とあるじゃありませんか。

ろう-・する【弄する】

《他サ変》 いろいろな手段を巧みに用いる。「甘言を―・して誘惑する」「策を―・する」

もて-あそ・ぶ 【弄ぶ・玩ぶ】

《他五》

  1. 手に取って遊ぶ「扇を―・ぶ」 [類語](する) 玩弄
  2. 慰みとして愛好する。「盆栽を―・ぶ」
  3. 人を慰み物にする。おもちゃにする。なぶる。「女を―・ぶ」
  4. 〔楽しむかのように〕思いのままにあつかう。「議論を―・ぶ」「運命に―・ばれる」 [類語](する) 翻弄。

(学研 現代新国語辞典 改訂第五版)

これだ。

しかし『学研 現代新国語辞典』においても「弄する」と「弄ぶ」の間に「優位さの違い」は見られません。各国語辞典の例文を読んだ結果、私の感覚が誤っているのではないかと思うに至りました。おそらくは「労する」と混ざっていたのでしょう。

例文の話になりましたので、ここで一つ明かしましょう。全ての国語辞典において「弄する」の例文は私の感覚とぴったり合致していました。それがなぜ語釈に反映されなかったのかは不明です。何となく、使い方が変わってきた言葉ではないかと思われます。

まとめ

  • 「弄する」は小学生向け国語辞典に載るか載らないかの難しい言葉
  • 「弄する」と「弄ぶ」との間には置き換えができるほどの互換性がない(のは間違いなさそう)

意外と長くなってしまいました。「こんな難しい言葉は載ってないよね」にならなかったことからして誤算です。小学生向け国語辞典にさっぱり載らない言葉ってのはどんなのだろう。

今回使った国語辞典

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

三省堂 例解小学国語辞典 第五版

岩波 国語辞典 第六版 普通版

岩波 国語辞典 第六版 普通版

広辞苑 第五版 普通版

広辞苑 第五版 普通版

広辞苑 第六版 (普通版)

広辞苑 第六版 (普通版)

三省堂国語辞典 第七版

三省堂国語辞典 第七版

大辞林 第三版

大辞林 第三版

集英社国語辞典 第3版

集英社国語辞典 第3版

現代国語例解辞典

現代国語例解辞典

大辞泉 第二版 DVD付

大辞泉 第二版 DVD付

国語大辞典

国語大辞典

明鏡 国語辞典

明鏡 国語辞典

明鏡国語辞典 第二版

明鏡国語辞典 第二版

小学館日本語新辞典

小学館日本語新辞典

新選国語辞典

新選国語辞典

新明解国語辞典 第5版

新明解国語辞典 第5版

新明解国語辞典 第七版

新明解国語辞典 第七版

小学生になってみる: 「最高」を調べる

初めて小学生の

毎日欠かさず国語辞典を引く私がふと思いました。小学生向け国語辞典に持ち替えたらどうなるのだろう。

I got a Japanese dictionary for elementary school girls.

早速得意の無駄遣いで『チャレンジ小学国語辞典 第五版』を買ってきました。せっかくなのでスイートピンクを。数ある小学生向け国語辞典からベネッセを選んだ理由は一番売れているから、なんてわけもなく、恋の語釈によります。早速引いちゃいましょう。

こい【恋】

[名詞] 相手を好きだと思う、特別な気持ち。思いこがれる気持ち。 (例) 恋人/初恋

(チャレンジ小学国語辞典 第五版)

単なる「相手」というのが重要で、他の国語辞典は異性を意識した内容になっています。「慕う」を使っていないのもわかりやすい。そこでベネッセに決定。(と言いつつもう1冊買っちゃったんですけど)

「最高」を調べる

さて、初回の今日は小学生と言えば「最高だぜ」と叫ばざるを得ないので「最高」を引いてみましょう。

さいこう【最高】

[名詞][形容動詞]

  1. いちばん高いこと。 (例) 最高気温。 [対] 最低。
  2. いちばんよいこと。 (例) 母の料理は最高だ。 [類] 最上。 [対] 最低。

(チャレンジ小学国語辞典 第五版)

2の語釈が該当するように思えますが、どうもしっくりこない感じもします。「小学生はいちばんよい」と言われると「いや、中学生もよいんだが」と言いたくなってしまいますね。ロリコンの罪深さはこの際置いておきます。

実はこのしっくりこない感じ、小学生用の国語辞典故ではありません。小学生と比べるならもう40代かなって感じで魅力ないけど一般には大人気の『広辞苑』を引いてみましょう。

さい‐こう【最高】 ‥カウ

最も高いこと。第1であること。「日本―の山」「―気温」「―の傑作」「―の気分」 ⇔ 最低。

広辞苑 第六版)

あえて焦らしたわけですが、こんな場合はだいたい『三省堂国語辞典』で解決。

さいこう 【最高】

[一](名) いちばん<高い/すぐれている>こと。

[二](形動ダ)

  1. いちばん すばらしいようす。 「―に おもしろい・気分は―だ」
  2. [話][感動詞的に] すばらしい。やった。 「Aチーム、―!」[一九五〇年代に広まった言い方]

▽(⇔ 最低。)

三省堂国語辞典 第七版)

二-2の語釈があたり。

つまり「小学生は最高だぜ」という高尚な感覚は小学生には理解し得ない…… というのも真実でしょうが、よく使う「最高」が小学校の国語では説明しきれないのかも知れません。尤もこれは小学生向けの国語辞典だからではありません。先の『広辞苑』の他『大辞林』でも多少はマシながら不完全。ならば仕方ないと見る向きもありましょうが、感情の表現は日常使われる小型辞典の魅せ場だと思うのです。

もちろん1語では何とも言えません。これからのお楽しみですね。

今回使った国語辞典

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

チャレンジ小学国語辞典 第五版 コンパクト版

広辞苑 第六版 (普通版)

広辞苑 第六版 (普通版)

三省堂国語辞典 第七版

三省堂国語辞典 第七版